
福井新聞「こども記者」活動は、福井県立美術(じゅつ)館の特別企(き)画展(てん)「東京藝術(げいじゅつ)大学スーパークローン文化財展(ざいてん)」を取材。記者6人は、シルクロードの世界遺(い)産や巨匠(きょしょう)の名画を巡(めぐ)る時空を超(こ)えた旅を楽しんだ。リアルに再現(さいげん)された人類の宝に触(ふ)れて「すごい技術(ぎじゅつ)」と心躍(おど)らせた。(山口晶永)【こどもタイムズに関連記事】
この日の先生は学芸員の野田訓生さん。「細かな手仕事と、最新のデジタル技術(ぎじゅつ)を融(ゆう)合した新しい作品で、時に本物を超(こ)えています。五感で楽しんで」と呼(よ)び掛(か)けた。
最初に目に飛び込んできたのは、奈良・法隆(ほうりゅう)寺の国宝「釈迦三尊像(しゃかさんぞんぞう)」。お経(きょう)が響(ひび)き、暗闇(くらやみ)に仏像(ぶつぞう)が浮(う)かぶ厳(おごそ)かな空間だ。実物をスキャンして3Dプリンターで立体モデルを制(せい)作し、職(しょく)人の手で精巧(せいこう)に創(つく)り上げた。本物で一部かけている部分も復(ふく)元しているという。「実物は近くでは見られないし、顔もはっきりと見えないんですよ」と野田さん。記者たちはそっと触(ふ)れてみた。「ひんやりしてる。これが本物…」
「東洋のビーナス」と呼(よ)ばれる菩薩(ぼさつ)が描かれた世界遺産の「敦煌(とんこう) 莫高窟(ばっこうくつ)」、四つの神が生き生きと舞(ま)う古墳(こふん)の内部なども見て回った。記者たちは「小さな傷(きず)まで復(ふく)元されていて、クローン技術(ぎじゅつ)ってすごい」と興奮気味だ。
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メイン展示(てんじ)の一つ、テロで破壊(はかい)されたバーミヤンの大仏(ぶつ)天井壁(じょうへき)画も圧巻(あっかん)の迫力だった。大仏(ぶつ)の頭の上にあった壁(へき)画を、約1万5千枚(まい)の写真と3Dデータから彩り豊(ゆた)かに復(ふく)元した。壁(へき)画を見上げる記者たちに、野田さんは「東西の文化が美しく融(ゆう)合した素(す)晴らしい絵」と説明してくれた。
歌川広重らの浮(うき)世絵や、ゴッホの西洋絵画といった名画の復(ふく)元も見どころ満載(さい)だった。浮世絵からは、ふんわりと“江(え)戸の匂(にお)い”が漂(ただよ)い、タイムスリップしたかのよう。ゴッホの自画像では、背(はい)景の青い渦巻(うずま)きの筆遣(づか)いに触(ふ)れ、絵が動く仕掛けにも驚(おどろ)きの表情(じょう)だった。マネの「笛を吹(ふ)く少年」はキャンバスを飛び出して立体的に再現(さいげん)されており、横笛を吹(ふ)く姿をまねて「ハイ・ポーズ」。
最後はスーパークローン文化財(ざい)の源(げん)流である「複(ふく)写」のフロア。国宝の三大絵巻が勢(せい)ぞろい。東京芸大の学生たちが針(はり)の先ほどの筆を使い、色落ちや紙のしわまで忠(ちゅう)実に写し取っている。戸田浩之学芸員は「文化財(ざい)を後世に伝える大切な作品。人の手はデジタルにも負けない、素晴らしい力を秘(ひ)めているんです」と教えてくれた。
クローン展(てん)は文化財(ざい)の「保存(ほぞん)」と「公開」の両立という大きなテーマを投げかけている。野田さんは「人類共有の財(ざい)産を守り、次の世代にどう伝えるのか。この問題を解決し、人々に感動を与えてくれるのがクローン文化財(ざい)です」と話していた。
企(き)画展(てん)は25日まで。夏休みも中盤(ばん)、友達や家族で世界の宝に触(ふ)れに行こう!